経理の転職

簿記3級での経理転職は厳しい?20代と30代のリアルな違いと突破口

簿記3級での経理転職は厳しい?20代と30代のリアルな違いと突破口

簿記3級を持っているけど、未経験で企業経理に転職できるのか不安に感じていませんか?

  • 20代簿記3級持ち:企業の経理に転職できる?
  • 30代簿記3級持ち:やっぱり厳しい?
  • 簿記3級での転職戦略はどう考えるべき?

簿記3級のみで転職に挑戦したくても、それが現実的なのか、可能なのか疑問に感じていて、次の一歩が踏みだせない人は多いです。

私は20代で無資格・未経験から経理に転職した経験がありますが、「こうしておけばもっといい条件で転職できたのに」と後悔もあります。

その経験を踏まえて、簿記3級で経理転職を目指す人が知っておくべきことをお伝えします。

この記事では「20代と30代でのリアルな違い」と「突破口となるキャリア戦略」を解説します。

この記事を読めば、簿記3級での転職の現実とより良いキャリアを築くための突破口がきっと見えてくるはずです。

結論から言うと、年齢によって転職の難易度は変わります。

20代▶簿記3級のみでもポテンシャルを示せれば転職可能

30代▶簿記3級だけでは厳しいが、プラスαの強みがあれば可能性あり

そのうえで私は、どちらの年代でも簿記2級を取得することをおすすめします。

なぜなら、簿記2級を持っていた方が、より有利に転職活動を進められるからです。

簿記3級の次のステップに踏み出せるように詳しく解説しているので、ぜひ最後まで読んでください。

簿記3級の経理転職は厳しい?実態をデータと経験から解説

簿記3級だけで経理転職を目指すのは不可能ではないけど厳しいのが実態です。

その主な理由は以下の通りです。

実務で求められる知識は簿記2級以上が前提のケースが多い

資格よりも「実務経験の有無」が重視される

「簿記3級歓迎」の求人は年収が低めで、条件も限られやすい

私も簿記3級しか持っていない時期に転職活動をした経験があります。

そのとき最も驚いたのは、自分の希望条件に合う求人の少なさでした。

結果的に、応募のために条件を緩和せざるを得ず、書類選考の通過率は非常に低いという現実に直面しました。

Shima

この記事を読んでいる方は、実務未経験で経理を目指したい方が多いと思います。

そこでまずは、知っておくべきデータを見ていただきます。

求人数が多い転職エージェントで、「未経験OK」のうち、キーワード検索「簿記3級」、「簿記2級」でそれぞれ絞った求人数を見てみましょう。

未経験求人のうち「簿記3級」のワードが入っているのは数%

と思った方もいるかもしれませんが、これは「全国で」です。

このように、「未経験」というだけで数百件の求人に絞られ、その中でも簿記3級を歓迎条件・応募条件としている求人はごく一部に過ぎません。

そしてこういった条件の緩い求人は低年収であることが多いです。

一方、簿記2級を要件とする会社は好待遇の傾向があります。

転職する以上、現職よりも同等かそれ以上の待遇の会社を目指したいものですよね。

そのためには、妥協した求人ではなく、簿記2級を取得して待遇の良い会社に応募することが重要です。

簿記3級はあくまで会計の入口に立った段階に過ぎません。

より即戦力への第一歩となる知識を身につけられる簿記2級を取得して転職活動を進めることで、好待遇の求人にも挑戦できるようになります。

もちろん、年収や条件を妥協してもよいならば、応募先は増えます。

しかしまずは、簿記3級の評価は転職市場でそこまで高くないという「現実」を知っておきましょう。

そのうえで、次のステップとして簿記2級を目指すのが堅実な戦略です。

と思った方のために、次は「簿記3級での転職は不可能ではない」と言った理由を年齢ごとに解説していきます。

20代なら簿記3級のみで転職できる

もしあなたが20代ならば、簿記3級のみでも経理に転職できる可能性は十分にあります。

ここ最近、日本の転職市場でも「スキル重視」の流れが強まっていますが、経理に関しては年齢が大きな判断基準になることが多いです。

なぜなら、経理の仕事には会社独自のルールが多く、経験者であっても慣れるまでに時間がかかるからです。

教育に時間がかかるため、企業は20代を育成して「長く働いてもらいたい」と考えるので、必然的に20代が有利になります。

では、20代がより転職を成功させるために、どのような自己PRをすればよいのでしょうか。

ポイントは次の3つです。

💡簿記3級取得をアピールして「経理職に向いている」というポテンシャルを示す

💡長く勤める意欲を強調することで採用担当者に安心感を与える

💡これまでの経験から経理に活かせるスキルをアピールする

簿記3級で経理職へのポテンシャルを示す

20代であれば、簿記3級を持っているだけで有効なアピールになります。

なぜなら、簿記3級は簿記・会計の基礎が詰まった資格で、経理職に向いているかを確かめる指標にもなるからです。

私が面接を受けたときも、面接官に「簿記3級は持ってるんだね~」と言われたので、プラスに働いた感触がありました。

また、もし簿記3級の学習途中であっても、それをアピールしましょう。

どのように学んでいるかを具体的に話せば「主体的に動ける人」として評価され、経理職への本気度をしっかり示せます。

長く勤める意欲を強調することで採用担当者に安心感を与える

採用にもコストがかかります。そのため企業は「育ててもすぐ辞める人」を嫌います。

それを示すデータが次の通りです。

「前職の勤続期間」を重視していると答えた企業が約64%
出典:「「若手人材の採用」に関する意識調査 第二新卒の採用において、64%の企業が「前職の勤続期間」を重視。勤続期間が「1年未満」の場合、懸念になりうる企業は63%。―『engage』企業アンケート―」エン・ジャパン

「前職の勤続期間」を重視していると答えた企業が約64%とのこと。

勤続期間を気にする=早く辞める人は採用したくないということです。

応募書類や面接で「腰を据えて長く働きたい」「経理として専門性を高めたい」と伝えると、採用担当者に安心感を与えられます。

20代だからこそ示せる「定着性への期待」を明言するのです。

これまでの経験から経理に活かせるスキルをアピールする

アルバイトで売上や現金を扱った経験、事務職でのデータ入力や正確性が求められた経験は、十分経理に転用できるスキルです。

私は20代で無資格・未経験から経理に転職しました。

そのときの面接では、前職で重要書類をきちんと管理していたことや、小口現金を正確に扱っていたことをアピールしました。

これらは「正確性」と「信頼性」を示す要素となり良いアピールになったのだと思います。

誰にでも、普通にやっているけど経理職につながる実績や経験はあるものです。

現職・前職の経験をしっかり振り返って、積極的にアピールしましょう。

ここまで紹介したように、ポテンシャルを示すことができれば、20代・簿記3級のみでも経理転職が可能です。

経理でキャリアアップを目指していく場合、早い段階で経理の世界に入り込むのは良い戦略です。

でもやはり、それなりに良い待遇の企業を目指すのであれば、簿記2級の取得はほぼ必須です。

転職市場において、簿記3級は基礎知識としての価値はあるものの、それ単体では評価は高くありません。

簿記2級を取得できれば意欲と知識の両面で簿記3級以上の評価を得られます。

つまり、待遇の良い企業など応募の幅が一気に広がります

30代は簿記3級だけでの転職は厳しい?求められるプラスαとは

結論から言うと、30代未経験・簿記3級のみで経理に転職するのはかなり厳しいです。

その理由の1つは、30代という年齢に対して企業が期待する役割にあります。

ここで書類選考に関する次のデータをご覧ください。

30代の中途入社者に期待する役割は、「即戦力となるプレイヤー」が最多。「これまで得た知識や技術を活かして、若手プレイヤーのお手本になってほしい」の声
出典:「30 代の中途入社者に期待する役割」(株式会社学情)

やはり30代は「経験してきた業務内容」が重視されます。

さらに別の記事、経理に未経験で応募しても採用されないのはなぜ?原因と突破法を徹底解説!でも書いたように、経理転職は実務経験の有無がかなり重要視されます。

30代は、良くも悪くも仕事のやり方・進め方が固まってきます。

そのため、企業は「応募者が自社に合うかどうか」を厳しく見極めるのです。

Shima

結果として、これまでの経験や実績が重視され、それらが応募先企業に合わなければ採用されません。

成長意欲よりも経験を重視されるのが30代。転職は20代に比べて厳しいのです。

とはいえ絶対に不可能というわけではありません。

以下のような条件や工夫があれば、30代・簿記3級のみでも経理職を目指すチャンスはあります。

30代・簿記3級のみでも経理職を目指す場合のポイント
  • 簿記3級プラスαのスキルをアピールする
  • 現職と同じ業種の企業に応募する
  • 人手不足が深刻な地方の企業ならチャンスあり

それぞれ解説していきます。

簿記3級プラスαのスキルを示す

30代なら簿記3級以外にプラスαの経験やスキルのアピールが必要です。

たとえば、前職でのマネジメント経験、チームをまとめた実績などは魅力的な実績になるでしょう。

先ほど紹介した調査「30代の中途入社者に期待する役割」によると、

  • チームマネジメントの補佐
  • チームのマネジメント

といったことを30代の中途入社者に期待する企業も多いとのこと。

簿記3級に加えてこうした強みをアピールすることで競争相手との差別化ができます。

私が30代前半・簿記3級所持で転職面接を受けて内定をいただいたとき、とにかくチームを率いた経験を強調しました。

Shima

現職と同じ業種の企業に応募する

業界知識や業界特有の慣習を理解していれば、経理でも即戦力性につながります。

例えば、製造業で営業をしていた人が同じ製造業の経理を志望する例を考えてみましょう。

商品や取引の流れを理解しているため、経理職でも活かせそうですよね。

同業種への転職は、採用担当者に納得感を与えやすいのです。

これはSNSで約12万人ものフォロワーがいるmotoさんが考えた「軸ずらし転職」と言われるやり方です。

今回の場合で言うと、業種を軸にして、職種だけを経理に変えるイメージです。

業種はそのままで職種を経理職にする

これなら職種未経験だったとしても、業種未経験ではないので経験がプラスに働きます。

場合によっては年収を下げることなく転職が叶うかもしれません。

人手不足が深刻な地方の企業ならチャンスあり

最後のポイントが地方狙いです。

都市部の人気企業ではかなり厳しいですが、地方の中小企業では経理人材の不足が深刻です。

ある調査によると、次のような調査結果が出ています。

  • 自社の経理部門において人手不足を感じているのは50.1%
  • 自社の経理部門の人手不足が深刻と感じているのは40.1%
  • 人手不足を感じる人の約3割が「担当者の高齢化による担い手不足」と回答。特に地方で顕著

ということです。1

そのため、人手不足の地方の場合、30代でも採用される可能性が十分にあります。

私も30代・簿記3級のみ所持で地方企業の経理職に内定をいただきました。

私の場合は未経験ではなかったものの、人手が足りていない地方企業だからこそ内定獲得できたのだと思います。

ただし、私はその内定を辞退しました。

なぜなら、待遇が自分の希望に届かなかったからです。

30代での転職では、生活やキャリアを考えると「同等かそれ以上の待遇の企業」に入りたい方が多いと思います。

その場合、簿記3級だけでは力不足です。

これまでの経験に加え、簿記2級を取得して「基礎以上の実務知識」示したいところです。

そのうえで、好待遇の企業に応募するのが戦略的です。

簿記2級を取得するのがおすすめな理由

20代・30代の解説でも触れましたが、結論、好待遇を目指すなら簿記2級まで取得するのが圧倒的におすすめです。

簿記2級を取得している方が応募できる求人の質が上がります。

また、経理・会計職への転職を強みとする転職エージェントサイトMS-Japanの調査では、

2級取得者の推移を見ると、40~44歳の時点で年収500万円を突破しており、3級取得者よりも早く年収500万円台に到達しています。

と記載されていて、簿記2級の有用性が示されています。

簿記2級では仕訳や決算書の基礎だけでなく、より実務に直結する内容を学びます。

そのため、未経験者でも『未経験』という最大の弱点を補えるのです。

簿記2級は「即戦力への第一歩」を示せる資格。

本気で経理転職を目指すなら、簿記2級まで取得することが最も効果的な戦略になるのです。

簿記3級は独学でも十分合格を狙えますが、簿記2級は難易度が一段上。

新たに工業簿記や、連結会計という会計処理など、初めて学ぶ分野が出てきます。

Shima

計算の流れをキチッと理解する必要があるので、簿記2級の試験範囲を体系立てて教えてくれるサービスの利用がおすすめです。

簿記2級を無料で学習できるCPAラーニングがおすすめ

ここで朗報なのですが、なんと無料で一通りの講義動画を公開してくれているサイトがあります。

それはCPAラーニングです。

運営元は会計士試験でトップクラスの実績を誇る予備校で信頼性も十分。

私自身、このサイトで簿記2級の学習を進め、無事8割以上の得点で合格することができました。

筆者簿記2級得点画像
Shima

CPAラーニングを使うメリットは、やはりコスト面です。会員登録は必要ですが、無料で有料級の講義が受けられます。

ただ、唯一のデメリットは、講師に直接質問ができないことです。疑問点が出たときは自力で調べる必要があります。

簿記3級の学習でつまづいたことがあったり、しっかりしたサポートを受けながら学びたい人には、有料の簿記講座をおすすめします。

簿記2級レベルとなると、通信講座も普通に活用してもいいレベルです。

有料講座ならスタディングかクレアールがおすすめ

コスパ重視なら、スタディングがおすすめです。

スタディング「簿2級合格コース」受講料 ※2025年9月時点

一括購入:19,800円

月々払い:1,812円×12回から

長年の簿記の指導実績のある方や、大手予備校の簿記講師だった方が講師として指導してくれるので安心感もあります。

スタディングではチケット制による質問も受け付けている他、過去に合った学習に関する質問も見ることができるようで、サポート体制も充実しています。

コストをできる限り抑えつつ、サポートも充実させたい場合はクレアールがおすすめです。

クレアール「簿2級パック Web通信」受講料 ※2025年9月時点

一括購入:35,510円 (9月割引価格)

※クレジットカード払いや学費ローン払いだと分割払い可能

回数制限なしで質問可能なだけでなく、合格に必要な部分だけを徹底して学ぶ「非常識合格法」を採用していて、効率重視で学べます。

どの方法で学習するにしても、とにかく大事なのは復習です。

講義を見ただけで満足せず、必ず復習も含めたスケジュールを組むことが合格のカギになります。

【番外編】会計事務所を経由して転職する方法と注意点

積極的におすすめはしませんが、選択肢のひとつとして知っておいてほしいのが、会計事務所で実務経験を積んでから企業経理に転職する方法です。

経理未経験でも、簿記3級を持っていれば会計事務所に就職できます。

会計の実務経験を積めるため、キャリア形成の「裏ルート」として利用する人もいます。

ただし、一般的に激務であることが多く、誰にでも勧められるものではありません。

会計事務所経由のメリット・デメリットをまとめると下記の通り。

メリット

①実務経験を積める

→月次決算・年次決算・税務処理など、幅広い会計知識を実務で身につけられます。

②転職市場で有利になる

→「会計事務所で経験あり」という肩書きは、企業経理の求人でも一定の評価を得やすいです。

③税務・会計の専門家と働ける

→税理士や公認会計士の下で働くため、専門的な知識を吸収できる環境があります。

デメリット

①繁忙期は激務になりやすい

→特に年末調整や確定申告シーズンは長時間労働が当たり前になりやすいです。

②給与水準は低め

→中小規模の事務所では年収300万前後が多く、企業経理に比べて待遇は見劣りします。

③スキルが偏る可能性がある

→税務中心の経験ばかりになり、経験が偏ることもあります。

このルートは確かに「未経験から経理職への入口」として使える場合があります。

ですが、激務や待遇面の厳しさを理解した上で挑戦する必要がある点には注意してください。

もし挑戦するなら、「2年で転職する」などと自分の中で決めると良いでしょう。

とは言っても、私のスタンスとしては「積極的におすすめはしない」です。

最終的にあなたが望むのは

  • 安定した勤務環境なのか
  • 実務経験を最速で得たいのか

などをしっかり考えて検討・判断しましょう。

まとめ:簿記3級のみでもキャリアを切り開く道はある!…だけど簿記2級取得がおすすめ

ここまで解説してきた通り、簿記3級のみでも経理転職は不可能ではありません。

特に20代であれば、ポテンシャルや将来性を示すことで内定につながるケースもあります。

30代でも、プラスαのスキルや同業界での経験、人手不足の地方企業を狙うことで突破口は存在します。

ただし現実は、簿記3級だけでは応募できる求人が限られ、待遇面でも妥協を迫られることが多いのも事実です。

私自身、30代でも簿記3級のみで内定をいただいた経験がありますが、待遇面で納得できず辞退したこともありました。

だからこそ結論はシンプルです。

安定したキャリアや条件の良い企業を目指すなら、簿記2級まで取得するのがベスト。

簿記2級は「即戦力への第一歩」となります。

簿記2級を取得して自信を持って企業に応募しましょう。

Shima

簿記の世界は、数字とにらめっこしながらパズルを解くような楽しさがあります。

簿記3級を取ったあなたなら、そのパズルをもっと大きく組み立てていけるはず!

簿記3級取得はゴールではなくスタートラインで、ここからが本当のキャリアの始まりです。

ぜひ次の一歩を踏み出してみてください!

  1. 「Sansan、「経理の人手不足に関する実態調査」を実施
    ~経理の半数以上が「人手不足」、うち9割弱が「深刻」と回答。時間外労働の増加や月次決算の遅れによる経営面への影響も~」(sansan)
    ↩︎